書評 オニールの成長株発掘法 How to Make Money In Stocks

 

株式投資というものにまだ、確信がなかった当初に調査・勉強を兼ねて購入したオニールの高名な本。最近再読した。

有名なCAN SLIMだが、当時の私には少々難しく、条件も厳しすぎて、これに当てはまる株を見つけること自体が難しい。すなわち現実的には使えないと判断した。

しかしある程度の経験を持った今、このCAN SLIMは現実的であり、特に小型株成長株を検討する場合、ほとんどは必須の条件であり、当然の条件とすら感じる。

この本はちょっと変わった構成になっていて、前半は有名な銘柄選択のスクリーニング条件であるCAN SLIMについて説明している。

すなわち、

  • current earnings
  • annual earnings
  • new product, new management, new high
  • supply and demand : small capitalization
  • leader or laggard
  • institutional sponsership
  • market direction

の7つである。

この7つは素晴らしいスクリーニング条件であり、本書の真髄である。

後半には、売りの金言や、買いの場合の2、3のチャートパターン、失敗する投資家や機関投資家についてのよもやまが記載されている。が、この後半は少々曲者である。

この本、かなり多くの、しかし必要な情報・ノウハウをすべて詰め込もうという意図を感じるのだが、オニールは自身の多岐多様なノウハウを文章としてアウトプットするのに、かなり苦労したに違いない。

後半は前半の明晰さに比べて、乱雑な印象であるし、あまり整理もされていない。

要するにオニールは、前半で力尽きて、後半の整理に疲れちゃったのではないかと思う。

しかしながら、オニールは、絶対に説明しないといけないと考えたからこそ、あえて後半を詰め込んだのだと思う。

特に後半に記載されている、売(利確と損切り)と買のタイミングの記述を正確に理解することはCAN SLIMを活かすために必須であると考える。

利確については、いくつかの判断条件が個条書き的に羅列されている。あまり理論的な感じはしないが、成長株の天井とはたいてい理不尽なまでの高値圏であり、そもそも感情的なものなのだろう。

損切りについては適切な幅は7~8%以内とあり、最悪10%までというふうな記載だ。

10%にいかないように工夫しましょうみたいな記載になっている。このあたりの執行テクニックに関する記載は少ないので、読者の工夫が必要だが、流石に適切な内容だと思う。

1つ問題があるのは、ストップオーダーはあんまり良くないと思う、、、みたいな私見が記載されている。価格を事前に決めておいて、自分で売ったら方がいいような気がする、、、みたいな弱い感じの意見だ。

しかしこれはオニールだからこそそうなのであって、多くの場合、不適切だと思う。何故なら多くの投資家は兼業投資家であって、本業が忙しい時に株価をチェックできないかもしれないし、ズルズル売れない心の人も多いだろうから。

オニールはたしかマーケットの魔術師のインタビューでも、そんなことを言っていたような気がするが、たぶんオニールみたいな意志の強い人なら違うのだろうけど、普通の人はストップオーダーを活用すべきだと思う。私はこのオニールのこの意見が心の何処かにあって、あまりストップオーダーを活用していなかったのだが、今そのことを後悔している。リスク管理としては、あまり自分を信じないほうが良い。真の危機で、自分がどのように行動できるか、その時にしかわからないのだから。

買タイミングについては、カップウィズハンドルなどのパターンの読み方がかなり詳細に記載されているのだが、推敲が足りない印象の記述であり、理解しにくい。多分オニールにとって当たり前的な前提情報の記載が漏れていると思われる。

例えば「ベース」という言葉がでてくるが、この言葉の説明が全く無くていきなり出てくるので、普通にはわからないと思われる。ベースというのは株価が長期的な上昇を始めた後の一時的な停滞または下落後の横ばい期間を意味してると思われる。

カップウィズハンドルは長期移動平均線の上で発生する、という見逃しそうな記載がちょろっとあるのだが、これは要するに、停滞から上昇を始めた後で完成するパターンであるということだ。天井圏とか下落の最中に似た形が発生しても意味がない。従ってそのためにはまず停滞を探す必要がある。

しかしその辺の足りない記述を他の書籍で補って読んだほうが良いにしても、これは素晴らしい指南本だ。

全体の補足説明としてマーク・ミネルヴィニ、テクニカル分析としてスタン・ウエンスタインを併せて読むことをおすすめする。